セリフ集を見て、
「とりあえず読んでみた」という方、どうでしたでしょうか?
実際に声に出してみると楽しいですし、

なんとなくそれっぽく読めた気がする!
そんな感覚になる方も多いのではないでしょうか。
ただ、その一方で

これで合っているのか分からない

どのセリフを選べばいいのか分からない
と感じている方が、こちらの記事へ辿り着いたのではと感じています。
実はそれは、才能やセンスの問題ではありません。
多くの場合、セリフの“読解”をどう考えればいいのかを知らないだけです。
ここでいう読解とは、
国語の授業のように難しく考えるものではありません。
感情を当てはめることでも、声色を作ることでもありません。
セリフは、
「何をしたくて、そのために言葉を使っているのか」
を整理するだけで、扱い方が大きく変わります。
この記事では、セリフを読むときに
最低限考えておきたい「読解の考え方」を解説します。
特に、
5W1Hの中でも
- Who(誰に)
- Why(なぜ)
- What(何を)
- How(どうやって)
この4つを中心に、
レッスンの現場でも実際によく使っている例え話を交えながら、整理していきます。
「上手く読もう」とする前に、
まずは考え始めるための視点を持つこと。
それが、この先の練習を無駄にしない一番の近道です。
この記事を書いているMotto!はこんな人!

①年間1000時間以上の
指導実績のあるボイストレーナー
②声優志望、プロの声優への
マンツーマンレッスン実績が
年間500時間程度あります
第一章|なぜ「それっぽく」読んでしまうのか
セリフを読もうとしたとき、
多くの方がまずやってしまうのが
「感情や読み方を決めること」です。
悲しいセリフだから悲しく、
怒っているセリフだから強く。
あるいは、アニメやドラマのイメージを思い浮かべて
「こんな感じかな」と声を作る。
これはごく自然な反応ですし、
最初の入り口としては決して間違いではありません。
ただ、このやり方だけで進めてしまうと、
どうしても「それっぽく読めているけど、何をしているのか分からない」
という状態に陥りやすくなります。
理由はシンプルで、
感情や声色は“結果”であって、目的ではないからです。
セリフというのは本来、
感情を表現するためのものではなく、
何かを達成するために使われる言葉です。
- 相手を動かしたい
- 自分を納得させたい
- 状況を変えたい
- 気持ちをごまかしたい
こうした「したいこと」が先にあり、
その手段としてセリフがあります。
しかしここが整理されていないと、
- 「悲しそうに」
- 「強く」
- 「優しく」
といった雰囲気だけをなぞることになり、
聞いている側には

「で、この人は何がしたいんだろう?」
という印象が残ってしまいます。
レッスンの現場でも、

「なんとなく合っていない気がする」
「自分では良いと思ったけど、違うと言われた」
というケースの多くは、
この段階で止まっていることがほとんどです。
決してセンスがないわけでも、
声が合っていないわけでもありません。
ただ、
セリフを“表現”として扱う前に、
“行動”として捉える視点が抜けているだけなのです。
では、その整理をどうやって行えばいいのか。
次の章では、
セリフを読むときに最低限押さえておきたい
「5W1H」の考え方について解説していきます。
第二章|セリフ読解は「5W1H」で考える
セリフを「行動」として捉えるために、
まず意識してほしいのが5W1Hの考え方です。
といっても、
国語の授業のようにすべてを細かく整理する必要はありません。
セリフ読解においては、
特に大事なポイントだけを押さえれば十分です。
ここでは、
数ある要素の中でも特に重要な
- Who
- Why
- What
- How
この4つに絞って考えていきます。
まず最初に考えたいのが、
このセリフは誰に向けて発せられているのかという点です。
- 目の前にいる相手
- その場にいない誰か
- 過去の相手
- あるいは自分自身
同じ言葉でも、
相手が変われば意味も重みも大きく変わります。
にもかかわらず、
「誰に向けたセリフなのか」を曖昧なまま読んでしまうと、
声や感情の方向性が定まりません。
まずは、
相手の存在をはっきりさせること。
これが読解の出発点になります。
次に考えたいのが、
なぜ今、この言葉を発しているのかです。
- 言わずにいられなかった理由
- ここで黙ることができなかった事情
- 心の中にある欲や衝動
セリフは、
「言いたいから言っている」のではなく、
言わなければならない理由があって出てくるものです。
このWhyが見えていないと、
どれだけ声を作っても、
どこか空虚な印象になりがちです。
Whyと並んで重要なのが、
このセリフを使って、最終的に何をしたいのかという視点です。
- 相手を説得したい
- 考えを変えさせたい
- 関係性を保ちたい
- 自分を納得させたい
ここでいうWhatは、
「感情」ではなく目的です。
悲しい、怒っている、といった感情は、
Whatを達成するために生まれるものであり、
それ自体がゴールではありません。
最後に考えるのが、
その目的を果たすために、どのように言葉を使うのかです。
- 強く押すのか
- 抑えて探るのか
- 冗談めかしてかわすのか
ここで初めて、
言い方やニュアンス、テンポといった要素が出てきます。
多くの方が最初に考えがちな部分ですが、
Howはあくまで最後です。
WhyやWhatが整理されていなければ、
Howだけを考えても、
セリフはうまく機能しません。
Why → What → How の順番が大切
セリフ読解でつまずく原因の多くは、
この順番が逆になっていることです。

どう言おうか(How)
どんな感情でいこうか
というところから入ってしまう。
ですが本来は、
- なぜ言うのか(Why)
- 何をしたいのか(What)
- そのためにどう言うのか(How)
この流れで整理していくことで、
セリフは「それっぽい音」ではなく、
意味を持った行動として立ち上がってきます。
次の章では、
この5W1Hの考え方を
より具体的にイメージするために、
レッスンの現場でもよく使っている
「川を渡る」という例えを使って解説していきます。
ここまで読んで、

「なるほど、だから今まで迷っていたのか」
と感じていただけたら、
次の章が一気に腑に落ちるはずです。
第三章|「川を渡る」という例えで考えてみる
5W1H、とくに
- Why
- What
- How
の関係をイメージしやすくするために、
レッスンの現場でよく使っている例えがあります。
それが、「川を渡る」という考え方です。
まず考えるのは、
なぜ向こう岸に行く必要があるのかという点です。
- こちら岸にいてはダメな理由がある
- どうしても向こう側に行かなければならない事情がある
これがWhyです。
セリフに置き換えると、
「なぜこの言葉を言わずにいられなかったのか」
「黙る、避ける、やり過ごす、という選択肢はなかったのか」
という問いになります。
Whyが弱いと、
川を渡る必然性がないまま、
なんとなく水に入ってしまうような状態になります。
次に考えるのが、
向こう岸がどこなのかです。
- ただ渡れればいいのか
- 安全にたどり着きたいのか
- 誰かを連れていきたいのか
これがWhat、
つまり最終的に成し遂げたいことです。
セリフで言えば、
相手を納得させたいのか、
自分の気持ちを整理したいのか、
関係性を保ちたいのか。
向こう岸が曖昧なままだと、
どこに向かって声を出しているのか分からなくなります。
最後に考えるのが、
では、どうやって川を渡るのかです。
- 橋を使うのか
- 泳ぐのか
- 浅瀬を探すのか
さらに言えば、
- 自分は何を持っているのか
- 時間はあるのか
- 相手は協力してくれるのか
これらすべてがHowに関わってきます。
ここでようやく、
言い方、強さ、テンポ、間の取り方
といった要素が意味を持ち始めます。
多くの方がやってしまうのが、
いきなりHowから考えることです。
どういう声で読もうか
感情はどれくらい乗せようか
ですが、
WhyもWhatも決まっていない状態で
Howだけを考えても、
どこにもたどり着けません。
それは、
- 「とりあえず泳ぎ方を考える」
- 「橋の渡り方だけ調べる」
のに、
なぜ渡るのか、どこへ行くのかが決まっていない
状態と同じです。
セリフもまったく同じで、
目的が見えていないと、
言い方はただの“雰囲気”になってしまいます。

「どのセリフを選べばいいかわからない」
「自分に合っているのがどれか分からない」
こうした悩みの多くは、
実は声質や技術の問題ではありません。
- Whyが想像できるか
- Whatがはっきり思い浮かぶか
この2点が見えた瞬間、
そのセリフは急に扱いやすくなります。
逆に、
「楽そう」
「声に合いそう」
という基準だけで選ぶと、
向こう岸が見えないまま立ち尽くすことになります。
まとめ 「上手く読もう」とする前に
セリフの読解に、
完璧な正解はありません。
ですが、
考えずに読むと、ズレやすい
というのは確かです。
- 誰に向けて
- なぜ言うのか
- 何を成し遂げたいのか
- そのために、どう言うのか
この流れを一度整理するだけで、
セリフは
「それっぽく読めた気がするもの」から
意味を持った行動に変わります。
最初から上手くやろうとしなくて大丈夫です。
まずは、考え始めること。
次の記事では、
こうして整理したセリフを
実際に録音するとき、どんな点に気をつければいいのか
について解説していきます。

読んで終わりではなく、
ぜひセリフ集に戻って、
一つでいいので試してみてくださいね。
セリフの考え方が整理できたら、
次は実際に声に出して録音してみましょう。
ただ、録音は真面目にやるほど

「これでいいのか分からなくなる」
という壁にぶつかりやすい作業でもあります。
次の記事では、
セリフを録音するときに気をつけたい考え方や、
独学で迷いやすいポイントを整理しています。
▶︎ セリフを録音するときに大切な考え方|独学で迷いやすいポイント整理
次に多くの人がつまずくのが
「掛け合いではないセリフであること」です。
相手の反応がなく、前後関係も分からない状態で読むセリフは、
実は独学では迷いやすい構造を持っています。
なぜ掛け合いがないと、こんなにも難しく感じるのか。
その理由を、声優レッスンならではの視点で整理しています。
▶︎ 掛け合いではないセリフが難しい理由|独学でズレやすいポイント

